少年たちはにこにこしてかがみこんだ。彼らが摘んだのは金色の花だ。世界いっぱいにあふれ、芝生から煉瓦の街路へと滴りおちて、水晶のような地下室の窓をそっとたたき、激しくたぎりたって、融けた太陽のまばゆい光ときらめきを四方八方に放っているあの花。
「毎年のことだ」と、おじいさんはいった。「あれは狂ったようにあばれまわる。わしは勝手にやらしているんだよ。庭に咲くライオンの群れだからな。じっと見つめてごらん、網膜が焦げて穴があくから。ありきたりの花さ。だれも目にとめようとしない雑草だ、たしかに。しかしわしらにとっては、気高いものなんじゃ、たんぽぽは」(p.25-26)
一九ニ八年の夏。
たんぽぽのお酒のびんのひとつひとつに、
生きていた夏のすべての日が入っている。
一度出会ったなら生涯忘れられない、五感を呼びさますような美しい描写の、風変わりでノスタルジックな物語。
レイ・ブラッドベリ/著
北山克彦/訳
晶文社
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