そのままでおいしく食べられる果物に手を加える、即ち料理するということは、楽園を追われたヒトの特権ではないだろうか。柔らかな果肉にたっぷりと抱えられた水分、そして自然の甘さ、果物ひとつひとつが持つ個性的な香り。それらを生かしてハーブや野菜、スパイスの香りを織り交ぜて作る料理は、なぜだかこんなにも艶っぽい一皿に仕上がる。
両手でそっと抱えて目を閉じ、その瑞々しさにあふれる香りを愉しみ、口づけをして欲しい。自然が生み出した、ヒトを魅了し続ける宝石のようなもの。ロマンチックな物語を背負った、美しい果物に。(本書p. 72より)
本書は果物料理のレシピが64通り紹介されている。
その料理写真は、キャンドルを灯したような叙情的でひそやかな陰影に満ち、果物料理の一皿を艶やかに浮かびあがらせている。
PALADISE LOSTと題されたレシピページには、春夏、秋冬と季節に分けた構成になっており、果物別に検索できる表も添えられている。サイズも大袈裟ではなく、手に馴染む文芸書のような存在感だ。
帯に記された料理の一部は以下の通り。
枇杷とブルーベリーのスープ/苺とラルドのタルティネ/マンゴーと鷄のフリット/オレンジと鰹のサラダ/キウイとチコリの前菜/ライチのカプレーゼ/桃とじゃがいものクレーマ/パイナップルとバジリコのゼリー/メロンとモツァレラのサラダ/無花果とプチトマトの炒め煮/栗のペペロンチーノ/すだちのグラニータ/蓮根のアグロドルチェ/洋梨とラムのラヴィオリ/柘榴のピッツァ...etc.
著者 渡辺康啓
写真 日置武晴(写真)
発行 平凡社
仕様 B6判 144ページ
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