太古の植物たちの化石から地球の歴史を読み解く
植物は立体的な骨格を持たないが、植物組織を形成する細胞壁は堅牢だ。細胞壁の主成分となるセルロースは、樹木や花粉までもを複合高分子で覆って表面を硬くし、水分をはじいて腐敗を防ぐ。この性質により、植物本体が化石化する過程で腐敗して炭化しても、あるいは本体に鉱物質が浸透した場合でも、植物細胞はほぼそのままの形状で保存される。こうした化石のおかげで、私たちは古代植物の内部組織をつぶさに観察し、その進化についてのヒントを得ることができる。
(はじめに より一部抜粋)
大英自然史博物館が所蔵する美しい植物化石標本とともに、植物がたどってきた進化の足跡、そして地球環境の変遷と行く末、植物をとりまく太古の生物たちの姿などを、地球と植物の変遷を象徴する「50の植物化石」から解き明かす。大英自然史博物館シリーズ第5弾。
目次
第1章 植物の起源……植物が光合成できるようになり、陸地に上がるまで
[光合成の跡]縞状鉄鉱/[植物の祖先の登場]紅藻/[藻類の繁栄]コエロスファエリディウム/[上陸初期の植物]クックソニア・ペルトニイ/[酸素量増加の証]炭化した木部細胞
第2章 種子・根・葉……植物が”植物の体”を手に入れるまで
[葉のない植物]サーソフィトン・エルベルフェルデンゼ/[風媒の痕跡]炭中の胞子/[花への前触れ]ゼノシーカ・デボニカ/[水の移送システム]リニア・ギンボニイ/[根の進化]スティグマリア・フィコイデス
第3章 森林の誕生と発展……草から樹木へ、樹木から森林へ
[最初期の樹木]エオスペルマトプテリス/[リンボク]レピドデンドロン/[茎から樹木へ]プサロニウス・ブラジリエンシス/[針葉樹]アガトキシロン/[北極諸島の温暖期]アクセルハイバーグ島の森林
第4章 仲間と敵……植物を生かした共生者と、植物にとっての加害者たち
[共生]菌類の化石/[炭素の循環]腐敗した樹木/[食料としての植物]トリゴノカルプス・パーキンソニ/[虫媒の痕跡]ペゴスカプス/[草食動物の跡]糞の化石
第5章 古代の植物……すでに絶滅した種から現代まで生き延びた種、そして謎の種まで
[ヒカゲノカズラ]スティグマリア/[シダ植物]クラドフレビス・アウストラリス/ [トクサ類]アステロフィリテスとパレオスタキア/[ソテツの種]バクランディア・アノマラ/[針葉樹の球果]アラウカリア・ミラビリス/[移行期の化石]アルカエオプテリス・ヒベルニカ/[絶滅種・シダ種子類]フィソストマ・エレガンス/[イチョウ]ギンゴウ・クレイネイ/[針葉樹]アガチス・ジュラシカ/[大量絶滅と植物]モナンテシア・サビヤナ
第6章 気候と多様性……植物化石が映し出す太古の地球の姿とは?
[生物多様性の緯度勾配]パジオフィルム・ペレグリン/[気候変動]化石化した果実群/[酷寒期と落葉性]アケル・トリロバトム/[南極大陸の花]ノトファグス・ベアードモレンシス/[サハラ砂漠のオアシス]フィクス/[大陸移動説]グロッソプテリス/[大気組成]ギンゴウ・ハットニイの気孔/[水生シダ類と寒冷化]アゾラ/[サバンナと草原]イネ科植物のフィトリス群/[針葉樹の森]ピセア・バンクシー
第7章 花……生物を惹きつける植物たちの武器
[花の起源の謎]モンセチア・ビダリイ/[炭化した花]シルビアンテムム・スエシクム/[果実の化石]ニパ・ブルチニイ/[キク科の花]ライゲンラウン・クーラ/[マメ類]プロソピス・リネアリフォリア/[果実の拡散]化石果実の詰め合わせ
最終章 植物と人類……共生と依存の歴史
[マツと人類の足跡]ピヌス/[穀粒]トリティクム・アエスティウム/[ヨシと湿地帯]フラグミテス・アウストラリス/[種を守る]シレネ・ステノフィラ
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ポール・ケンリック(著・文・その他)
松倉 真理(翻訳)
矢部 淳ヤベアツシ(監修)
発行:エクスナレッジ
B5変形 160ページ