製紙、紙糸づくり。世界的に見ても珍しい伝統工芸であるこの紙糸づくり、紙布織りを行っている著者は、古くから伝わるこの手仕事の技が残ってほしいという思いから、紙漉きの製造工程や紙糸づくりの手法を年月をかけて1冊にまとめあげた。表紙をひらくと手漉きの紙と細い紙糸が2本、なんと実物が添付されており、文面は全て日英二ヵ国語で書かれている。製造工程や手法も写真を多数用いて細やかに解説されている。
紙糸の話をすると、「紙は自分で漉いていますか」とたびたび尋ねられます。答えは「いいえ、紙を漉くのであればもう一度生まれ変わってこなければなりません。紙漉きは一生の仕事ですし、紙糸作りも同じだと思います。」
このことを理解していただくために手漉き紙の製紙工程を、二〇〇三年から二〇〇八年にかけて記録した写真を用いてお話しいたします。
(p.13 紙漉きの里―高志の生紙工房)
「紙は歳をとればとるほど良くなる」といわれます。絡み合った繊維が更に年月を経てしっかりと安定してくるからです。紙は素材の繊維の絡み合いだけでできあがっていますので、年月のみが繊維を安定させる要素のようです。この安定していく過程を「枯れる」という言葉で表現します。「枯れる」ということは紙が滑らかで丈夫になることを意味します。機会があれば古い紙と若い紙に触れて比べてみると違いがわかるでしょう。紙糸作りには漉かれてすぐの紙よりもしばらく寝かせておいた紙を使うと作業もし易いようです。
(p.27 枯れた紙 より)
軽野 裕子(著/文)
発行:紫紅社
縦260mm 87ページ
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