大麻、マリファナ、カンナビス…。それは丈夫で汎用性が高い繊維素材であり、美味しい食材であり、ヒーリング効果のある有用の植物。
誤解の多い「大麻」のホントを、正しくフラットに紹介する大麻図鑑。
本書をお読みいただく前に
監修者:高安淳一(大麻博物館館長)
〜「大麻」と「麻」と「マリファナ」〜
本書では「大麻」に「あさ」という読み仮名を当てている箇所があります。これには深い理由があって、本書をお読みいただく前に、「大麻」という言葉について少し説明しておきたいと思います。
「大麻」「麻」「ヘンプ」「マリファナ」。
じつはこれらの言葉は、すべて同じ植物を指します。しかし、皆さんがそれぞれの言葉に対して抱くイメージは大きく異なるのではないでしょうか。
「大麻」は本来、日本人にとって非常に身近な存在で、衣食住を支える生活に欠かせない農作物でした。ですが現代では、大麻=ドラッグ(違法な薬物)のイメージが強すぎて、本来の「大麻」の意味が失われつつあるのです。
「麻」と聞いて、現代の日本人が連想するのは主に衣服の素材であり、「違法な薬物」を連想することはほとんどないと思います。ですが、広辞苑によると、「大麻は麻の別称」と定義されており、実際古い文献の中で「麻」と書かれているものは「大麻」をさします。かつての日本において「麻」という言葉は「大麻」を意味していたのです。
しかし、繊維としての大麻の需要が減りはじめていた1962年、「家庭用品品質表示法」という法律が制定され、この法律における「麻」は、「リネン(和名:亜麻)」と「ラミー(和名:学麻)」に限るとされました。
かつての「麻」であった「大麻」は、「麻」と表示できなくなってしまったのです。そして現在、「麻」という言葉は、「植物から採れる繊維の総称」として使われるため、さらに複雑になり、「麻」の意味自体が変わってしまっているのです。ですから、「日本人の営みを支えてきた農作物」としての「麻」を指したい場合、「大麻」という言葉を使わざるを得ないというわけです。
本書では、「大麻」という植物のさまざまな面に焦点を当て、その歴史や文化的側面、暮らしの中でどのように活用され、どのように人びとの生活に根付いてきたのかを紹介しています。フランスで出版されたものですから、日本のそれとはまた少し違う面もありますが、本書を読むことで、「大麻」が「危険な薬物」としてではなく、正しくどういうものであるのかを知っていただく一助になればと願っています。
著者プロフィール
セルジュ・シャール (著/文)
農業博士/技師。インヴィトロ試験所の所長、育苗企業のセールス事業部長を経て、現在は多くの園芸専門誌に寄稿するかたわら、60冊ほどの植物に関する書籍の著者でもある。2008年と2021年にはサン=フィアクル賞を受賞している。
パスカル・コサ (著/文)
フリーのジャーナリスト。専門は経済、社会潮流、人生・暮らしなど。『ル・ジュルナル・デュ・ディマンシュ』紙や『ストラテジー』誌など多くの新聞や雑誌に寄稿している。
マリー・ニコ (著/文)
『リーヴル・セルヴィス・アクチュアリテ(LSA)』誌、『キャピタル』誌、『レクスプレス』誌などで活躍するジャーナリスト。農業ジャーナリスト賞(AFJA)を受賞している。
高安 淳一 (タカヤス ジュンイチ) (監修)
大麻繊維研究家・大麻博物館館長。
大麻博物館は2001年に栃木県那須に開館。
日本人の営みを支えてきた農作物としての大麻の情報収集や発信を行なうかたわら、各地で講演やワークショップを開催している。
大麻博物館としての著書に『日本人のための大麻の教科書「 古くて新しい農作物」の再発見』(イーストプレス)、『大麻という農作物 日本人の営みを支えてきた植物とその危機』(自費出版)などがある。
仕様:B5変形 並製 総176頁
■クリックポスト185円より発送可能です