イタリア、ギリシャ、トルコ。世界トップの作り手たちのもとへ現地取材し、彼らが自らの言葉で語る〈自分の人生やオリーブへのこだわり、夢、今後について〉をオールカラーの写真とともに収録。
あまり知られていないかもしれませんが、一本のオリーブの木には雄の枝と雌の枝があります。横や下に伸びる枝は雌。上にまっすぐ長く伸びる枝は雄。雌の枝は毎年実をつけますが、雄の枝は一度のみ。その後は実がならず栄養分を吸収するだけなのでカット〈剪定〉します。(p.54)
オリーブの木は収穫したら翌年は休ませます。そのため二万二〇〇〇本の木を持っていても、毎年一万一〇〇〇本分しか実がならない計算になります。今は収穫量が減ってきていて、毎年八〇〇〇キログラムくらいしか採れません。収穫量が減った一番の理由は気候変動です。私の感覚では二〇年前に比べて半分くらいに減った気がします。(p.70)
仕事はやめようと思えばいつでもやめられますが、手のかかるオリーブの仕事は何より楽しいのです。何が一番楽しいかと言えば、荒れ果てたオリーブ畑を任されて、ボロボロのオリーブの木をケアして、元気で健康な状態に戻すこと。健康になった木が実をつけてくれると幸せを感じます。以前ある木を手に入れた時、その木は病気の状態でした。枝が木に巻きついて乾いていました。それを治すことができたのです。(p70)
第一章イタリア・シチリア
オリーブオイル生産者・アグレスティス代表
ピーノ・ニコトラ
新鮮なグリーンピーマンやセロリをかじったような青野菜の香りがパッと弾け、生の青唐辛子を噛んだようなビリッと持続する辛さが口の中に広がります。淀みのない辛さに伴い、バランスの良いエレガントな苦味も感じます。採れ立ての青野菜の折り重なるような複雑な香りと強い絡みや苦味。奥深いストラクチャー〈構造〉の特徴から、ブリジゲッラだと直感しました。
「この品種はブリジゲッラですか?」
ブースにいた搾油担当者に確認したら、彼の方が驚いていました。ブリジゲッラは市場であまり見かけない品種で、この品種を使ったオリーブオイルの特徴についてもほとんど知られていないからです。(p196)
第4章イタリア・ボローニャ
著者から見たバリニャーナ|バリニャーナとの出会い
土地の風土やオリーブの樹木の生命力がありありと伝わってくる写真の数々が大変美しく、現地に降り立ったような錯覚に陥ります。作り手たちの個性や技術、こだわりを通して、オリーブへの熱い情熱と使命感と愛情が伝わってくる、とても強い磁力のある本でした。
表面的な紹介に止まらず、作り手の彼らがここまで事細かに語ってくれているのは、同じくオリーブオイルに熱い情熱を持ってコミットしている山田美知世さんによる取材だったことも大きいのではないかと思います。
著者の山田美知世さんは、ミラノ在住の日本人初イタリア農林食糧政策省の国家試験取得オリーブオイル鑑定士であり、世界8ヵ国最重要オリーブオイル・コンペティションで国際審査員を務めています。
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目次
序
第1章 イタリア・シチリア
オリーブオイル生産者・アグレスティス代表
ピーノ・ニコトラ
第2章 ギリシャ・クレタ島
クレタ島ACR官能評価研究所所長・農学博士
オリーブオイル鑑定士・国際審査員
エレフテリア・ゲルマナキ
解説 オリーブオイルの生産工程
第3章 トルコ・アナトリア
オリーブオイル生産者・キルリ代表
メメット・マニサリ
第4章 イタリア・ボローニャ
パラッツォ・ディ・バリニャーナ創業者・オーナー
カルロ・ゲラルディ
第5章 オリーブオイルと作り手たち
あとがきにかえて
謝辞
■著者 山田 美知世 (ヤマダ ミチヨ)
京都生まれ、ミラノ在住。日本人初イタリア農林食糧政策省の国家試験取得オリーブオイル鑑定士(イタリア共和国農林食料政策省オリーブオイル鑑定士登録番号 MI.0023278)。日本人で唯一、世界8カ国最重要オリーブオイル・コンペティションで国際審査員を務める。イタリアに特化した月刊女性誌『amarena』(扶桑社・現在は休刊)の元編集長。
イタリア各地で開催されるオリーブオイルのパネルテスト(欠陥の有無や品質の鑑定と評価)に公式鑑定士として数多く参加。オリーブオイル生産者へ生産指導も行う。2022年イタリアで最も歴史あるオリーブオイル・コンペティション「エルコレ・オリヴァリオ」から、イタリアのハイクオリティ・エキストラバージンオイルを国外に広めた功績に対して「レキトス賞」を授与される。オリーブオイル以外にも、長年イタリアの食文化全般やファッション、インテリアに関する取材撮影や執筆活動などを行う。
■発行 KuLaScip
■サイズ A5判
■ページ 240ページ
■仕様 並製
■送料 210円より