東西の古い文献には日食・星食・流星・彗星などの数多くの天文記録が載せられている.今日,複雑な天文学的計算によって当時の状況を再現してみると,それらの記述が正確であるかどうかがわかる.著者は数々の記録の一つ一つを計算で確かめ,そのなかから興味深い話題を選びだし,昔の人たちが見た星空の世界へ読者を誘う.
仕様 新書・並製・カバー・216ページ
発売 1982年10月
発行 岩波書店
送料 210円より発送可能
目次
一 星月に入る――星食
『日本書紀』の星食記録
プロの観測者たち
古天文学の登場 復元作業の実例
月と星とどちらが近いか
路を歩いていて見かけた星食
正確な中国の古記録
問題のある朝鮮の古記録
ヨーロッパの星食古記録
判定困難の星食記録
二 日蝕え尽きたり――日食
日本最古の日食記録
記事の日付修正の試み
奇怪な不食記事の羅列
日食を祈禱で祓った話
平安京が闇になった
『源平盛衰記』の日食
『書経』の日食
『春秋』の日食
東西でちがう日食の周期 長安で見えた皆既日食
三 歳星氐を犯す――惑星の合犯
ある夜の天変
持統天皇に凶兆か
惑星接近・合犯の記事
三星合は天下の大乱
西郷星
惑星直列
ベツレヘムの星
四 『明月記』の客星――超新星の爆発
アマチュア天文家の発表
わし座新星の例
超新星の発見
超新星の謎
かに星雲
『明月記』の客星記事
日本・中国以外の記録
その他の客星の記録
五 光り物――流星と隕石
聖書のなかの流星
中国・日本の最古の記録
天狗と旻法師
日本・ヨーロッパで同時記録
『続日本紀』の流星
その他の流星の記録
『明月記』の光り物
日蓮上人と星
しし座流星群
六 ハレー彗星――その二千年の履歴
天武天皇とハレー彗星
彗星の多い年
ハレー彗星の軌道
ハレー彗星の周期
ハレー彗星の履歴しらべ
七 南極老人星――カノープス
老人星信仰
日本・中国・朝鮮の観測記録
八 シリウスはむかし赤かったか
赤い犬シリウス
赤い謎をとく
九 ガリレオ衛星は中国で発見されていたか
ガリレオ発見の四衛星
ガリレオより二千年前
十 科学の黒船――金星過日
発端の手紙
地球と太陽との距離をはかる
ハレーのアイデア
金星経過のおこる周期世紀における観測
一七六一年の金星観測
ブ ドロップ
一七六九年の金星観測
陽視差の一覧
一八七四年の観測の世界的情勢
来日した観測隊
メキシコ観測隊の出発
メキシコ隊横浜に到着
観天場の構造
予備観測の開始
いよいよ当日――山手観天場
野毛山観天場にて
ディアスの観測記
写真撮影に成功
撤収そして帰国
十一 黒い太陽――本邦初のコロナ観測
荒井郁之助のこと
本州を横断した皆既日食
越後国三条における観測
英国王立天文協会誌に発表
伊沢修二のこと
日食観測記念碑
D・P・トッドのこと
観測地を福島県白河に
トッド夫人の日食残念記
著者プロフィール
斉藤国治(さいとう・くにじ)
1913-2003年
1974年東京大学東京天文台教授を定年退官.以後「古天文学」を創設する
著書―『飛鳥時代の天文学』
『国史 国文に現れる星の記録の検証』
『古天文学一パソコンによる計算と演習』
『古天文学の道』『古天文学の散歩道』
『中国古代の天文記録の検証』
『日本・中国・朝鮮 古代の時刻制度』
『宇宙からのメッセージ 歴史の中の天文こぼれ話』
『小川清彦著作集 古天文・暦日の研究』