植物を描くのが好きです。植物は動物みたいに動いたり声を出したりはしませんが、意思のようなものを持ってありとあらゆる生き物に協力してもらいながら戦略的に生きています。とても静かにゆっくりと動くので私たちの目には、ただ成長しているだけで何も考えてないように見えます。
一度夫が庭の草刈りをした後、元気だった唐辛子の苗がばったりと倒れていたことがあります。どこか切ってしまったのかと思って注意深く見たのですが傷ひとつありません。「どこも切れてないよ」と話しかけてしばらくして見に行くと、しゃんとして元気になっていました。あれは絶対に「切られた」と思った唐辛子が気絶したのだと思っています。夫が初めて種から育てたバジルを、最初に間引きした時も、間引きされなかった周りのバジルが次々に倒れて、ぐったりしていました。その時も気絶したのだと思います。
(中略)
初めて行った国で、どこに何が生息しているのかもわからないまま出かけて、広大な森の中で珍しい小さな蘭を見つけた時も、ここに見に来いと座標指定されたような気分でした。私は見るだけなので、植物や菌類にとってなんのメリットもないのですが、なんとなく「今、咲いているから見に来る?」と、呼ばれたような気分でした。植物を探し歩いていると時々、そう感じます。
実際には植物は何も話しませんが、そう思った方が楽しいので、そういうことにしています。
中西なちお
(本書 はじめに より部分抜粋)
出版社より
花の記憶を内省的に綴る仕事。
彼女は誰にも惑わされず
ひとり衝動的に線を描いていた。
時間軸を超えて植物の命を
永遠に愛でる私的な姿勢が愛おしい。
ジョージアの花、家のそばの花。
蒐集した古い紙とそこに載せた
ドローイングと標本を託され
その可憐な振る舞いを
ローズピンクとゴールドの造本にした。
送料 210円より発送可能です
※9/1より発送いたします
著者 中西なちお/TORANEKOBONBON
植物標本 松田史乃 則武有里
植物採集 松田浩祐
植物観察 児島康宏
装幀 サイトヲヒデユキ
監修 中西義明/齋藤博美
印刷所 八紘美術
製本所 博勝堂
発行所 書肆サイコロ
サイズ A5変形サイズ
144頁・布上製
著者紹介
トラネコボンボン 中西なちお
「トラネコボンボンは旅するレストランです。
開店場所は決まっていません。
穀物と野菜を中心に、季節や場所にあわせて
いろんな国の料理店に変わります。
素敵な洋食屋さん、サーカスの売店、
市場のお菓子売り、アフリカ料理店、
アジアの屋台、街角のサンドイッチ屋、
ロシアの列車の車内食堂
旅行に出かけた気分で
楽しんでもらえたらと思っています。
blog「記憶のモンプチ」では毎日一枚、
動物の絵を更新中。
2011.3.11、避難先から友人に
何か送ろうかたずねたところ
「毎日一枚動物の絵を送って」と
言われてから毎日描いている。
なお「記憶のモンプチ」は
茶色いトラネコが住んでいる世界の話である。
その他、役に立たない新聞「動物新聞」編集長。」
http://toranekobonbon.com/