著者自らが撮影した250点余の貴重な写真で魅せる緑の屋根
屋根の頂上部、てっぺんの部分を「棟(むね)」といい、棟には屋根材の固定や雨漏りを防ぐ役割がある。
棟の部分をどのように処理するか?この仕組みを棟仕舞(むねじまい)といいます。
芝棟は、茅葺屋根の棟をシバの生えた土の重みで押さえると同時に、シバの根が棟にからみつくことで棟を固定するという、特異な棟仕舞です。シバのほかに、ユリやイチハツ、ヤブカンゾウ、イワヒバなどを植えた芝棟もあります。
本書第1章 水戸黄門やマリー・アントワネットが愛した「屋根の花園」より
イチハツはアヤメの仲間の植物で、当店でも好評販売中の文庫本、『文庫版 野草の名前[春]和名の由来と見分け方』によると、葉先が尖った様子が剣に似ているので火除け・雷避けになるとして屋根の上に植えられたと書かれている。
著者が江戸時代以降の浮世絵、絵巻、絵画、写真、書籍等を精査し、空中写真での確認を経て現地調査を行ったところ、芝棟の現存数は2011年時点で約600棟あることがわかったという。(このうち9割は岩手県なのだそうだ)
この本では著者の8年間に及ぶ「芝棟」の調査と研究がふんだんな"芝棟写真"とともにわかりやすく解説されている。日本国内で見学可能な芝棟リストつきであるのも嬉しい。
日本と世界各地の芝棟・草屋根を見ているととてものどかな気持ちになる。ヴェルサイユ宮殿のプチ・トリアノンの田舎風建造物の芝棟にもアヤメが植えられていたりと、植えられている植物にもふしぎと共通点もあり面白い。
失われつつある美しい光景を日本各地に旅し、水戸黄門の終の住処など見学可能な80件余をデータとともに紹介。さらにマリー・アントワネットが愛したフランスにもあるという芝棟を求めて、ヴェルサイユ宮殿やノルマンディー地方ほかを訪ね歩く。
また、屋根全体に芝を載せた北欧に伝統的な「草屋根」が、街の中心部で見られるデンマーク領フェロー諸島へと飛び、数々の絶景に出合う。(本書カバーより)
現代は消防法などの都合により、あらたに茅葺屋根の家を建てるのは難しいらしい。しかし、太宰府天満宮の本殿の改修期間に建てられた3年限りの仮殿(屋根に木々が植えられていて壮観!)など、現代の建築基準をクリアした上で作られる見事な芝棟、草屋根の例も紹介されている。
目次
はじめに
第1章 水戸黄門やマリー・アントワネットが愛した「屋根の花園」
第2章 日本の芝棟
第3章 フランスの芝棟
第4章 フェロー諸島の草屋根
第5章 屋根の花園のこれから
おわりに
参考文献
見学可能な日本の芝棟
著者プロフィール
山口隆子
1972年 東京都生まれ
1995年 お茶の水女子大学文教育学部地理学科卒業
1996年 東京都入都(造園職)
建設局にて都立公園・霊園・動物園の設計・維持管理を担当後、東京都環境科学研究所研究員、環境局にてヒートアイランド対策、地球温暖化対策、校庭芝生化・屋上緑化等都市緑化の推進、自然保護に従事。
2008年 お茶の水女子大学 博士(学術)
2012年 技術士(環境−環境保全計画)
2017年 法政大学文学部地理学科准教授
現在 法政大学文学部地理学科教授
専門 気候学・生気象学
著書 『ヒートアイランドと都市緑化』(成山堂書店、2009年)
『持続可能な低炭素社会�掘戞碧務て斬膤惱佝撚顱�2011年、共著)
『世界の気候事典』(朝倉書店、2022年、編著者)
趣味は読書とピーターラビットグッズ収集。最近は、芝棟の情報を得るために始めたInstagramの投稿にも励んでいる。
発行 八坂書房
仕様 A5 ソフトカバー 144ページ
発売 2025年04月
送料 210円より発送可能です