美しい色。美しい香り。時間をかけ心を尽くして旬を集めることは、わたしの生活そのものだ──。知らない土地に古民家を買って宿のオーナーシェフとなり、各地から訪れる人をもてなすようになった著者。
春はふきのとうを摘み、竹の子を掘る。夏は草を刈って桃をかじる。秋は柿を干して鹿肉を焼き、冬は薪を割って柚子を蒸す。12か月の味わい深い物語。(出版社より)
乾いていても木は生きている。チェーンソーで細胞が傷つけられた途端に、眠っていた香りがおがくずとともに弾け、ひのきだと明らかに分かるときもあれば、チョコチップクッキーだったり、男の人のひげそりクリームを思わせる香りのこともある。
〈薪は二度ひとを暖める。一度めは薪を割って体を動かすときに。二度目は燃えて熱を生むときに〉
誰だったかアメリカの作家がこんな風に書いていた。たしかに、薪を切ったり運んだりしているうちに軽く息があがり、その後の家事や仕事に勢いをつけて取りかかることができる。 (p.42)
草舟あんとす号's voice
お客様のお取寄せ依頼で出会った本。可愛い表紙と戦場という殺伐としたワードのギャップにドキッとしつつ、拾い読みしてみると、どのページにも必ず心に残るセンテンスがあって夢中で読んでしまった。そして、文章がどんな方向に展開してゆくか読めないところも面白い。料理のディテールが楽しい。人生に取りかかっているライブ感、潔さのようなものがあって瑞々しい本でした。
著者 寿木けい
仕様 四六判 192ページ
発行 新潮社
発売 2025年7月
送料 210円より発送可能です
目次
序
十月 あの障子、最高だね
十一月 柿の尻をもむ
十二月 温泉街の大喧嘩
一月 太陽が照らす者
二月 梅の涙
三月 畳の目ひとつの春
四月 山に星座を探す
五月 野良のアリア
六月 デコルテの北斗七星
七月 口紅、夕立、蛍袋
八月 百の顔で土に生きる
九月 読めないハガキ
それぞれの春 あとがきに代えて
著者プロフィール
寿木けい(スズキ・ケイ)
エッセイスト。大学卒業後、編集者として働きながら執筆活動を始める。2023年に遠矢山房(山梨市)を開業。薪割りから室礼、調理まですべてを手がける。著書に『わたしのごちそう365』、『土を編む日々』、『泣いてちゃごはんに遅れるよ』などがある。富山県砺波市出身。ふたりの子供と甲斐犬と暮らす。