作家になっていなかったら園芸家になっていたでしょう、と手紙に書いたほどの「庭の人」チェーホフは、丹精こめて育てた草木の先に何を見つめていたのだろうか。一度は失われた庭が復活するまでの人びとのドラマをたどり、チェーホフゆかりの植物をめぐるエピソードを語る大きなロシアの小さな庭の本。
著者 小林清美
発行 群像社
発売 2004年10月
仕様 B6サイズ 205ページ
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チェーホフやロシア人にとって親しみ深い植物たちについての章もあります。
ロシア人はよく野の花を摘んで花輪や花束をつくるが、夏、そこに必ず使われるのはフランスギクとヤグルマギク(通称、矢車草)だ。このふたつの花なしに夏の花輪や花束は考えられない。(p157)
からりと晴れた風の日にフランスギクの咲く草原に行って、耳をすませると、静かなささやきが聞こえる。これはロマーシカの白いまつげが瞬きする音だという。ロマーシカは雲や星の動きを理解しようとずっと目を見開いて空を見つづけるので、目が疲れ、白いまつげをぱちぱちさせるのだという。また、このカモミールの花は空から星が落ちた場所に生えるとの伝説もある。(159p-160p)
目次
『すぐり』と『桜の園』
失われた庭をふたたび
メーリホヴォの庭を訪ねて
*
トウヒ
松
ライラック
ロマーシカ
ゴボウ
トマト
カノコソウとスズラン
*
ヤルタの庭
著者プロフィール
小林清美 こばやし きよみ
ロシアの人びとと植物の関わりをテーマとした文章を数多く執筆しつつ、ロシアの植物を集めた庭づくりにも励む。植物を通してロシアの生活文化と文学に親しみ、仲間とともに季刊誌「リャビンカ・カリンカ」を発行している。共著書に『イワンのくらし いまむかし』(成文社)がある。上智大学外国語学部ロシア語科卒。