【文庫】木のいのち木のこころ〈天・地・人〉/西岡常一・小川三夫・塩野米松

法隆寺の大工には代々口伝が伝わっていますのや。私はおじいさんからこれを教わりました。そのいくつかを紹介しましょう。
法隆寺を1300年守ってきたのは、職人の手から手へと引き継がれてきた技と知恵。それは決して言葉にできない手の記憶である。“最後の宮大工”西岡常一が木と人の育て方を語る〈天〉の巻。

宮大工の仕事は期間が長い。三重塔を造る場合、三年、四年はかかる。法輪寺の塔も長いことかかった。途中で休んだりしたこともあって、始めてから出来上がるまでに八年ぐらいかかった。これはいい教育の場所だったよ。自分のやった仕事は見えるし、目の前に立派なお手本があるんだからな。西岡常一っていう名人が実際に手を動かしてやって見せてくれるんだ。それも同じ部材がいくつもあるから何回も繰り返してやるんや。
三度追い返されながらも遂に西岡の唯一の内弟子となり、夢を実現させた小川三夫が、宮大工の未来を語る<地>の巻。

鵤工舎ってどんなところかって?そうだな。まず宮大工の工人の集まりだっていったらいいかな。工人っていっても、みんなが一人前っていうわけじゃないな。一人前の大工もいるし、昨日入ったような何にもできない見習もいる。そんなまだ一人前じゃないほうな多いんと違うか。だから宮大工を目指す工人たちの集まりって言ったほうがいいかもな。
小川が主宰する鵤(いかるが)工舎の若者19人に取材した〈人〉の巻。聞き書きノンフィクションの歴史的名著。

西岡常一
Nishioka Tsunekazu

(1908-1995)
奈良県生れ。法隆寺金堂、法輪寺三重塔、薬師寺金堂、同西塔などの復興を果した最後の宮大工。文化財保存技術保持者、文化功労者。著書に
『木に学べ」、共著に『斑鳩の匠 宮大工三代』「法隆寺を支えた木』がある。

小川三夫
Ogawa Mitsuo

1947年、栃木県生れ。高校卒業後、三度追い返されながらも遂に西岡棟梁の唯一の内弟子となる。法輪寺三
重塔、薬師寺金堂、同西塔再建に副棟梁として活躍。'77年鵤(いかるが)工舎を設立。全国の院の修理・改築・新築の設計施工などに当たる。
著書に『不揃いの木を組む」など。

塩野米松
Shiono Yonematsu

1947年、秋田県角館生れ。東京理科大卒。芥川賞候補4回。聞き書きの名手で、失われゆく伝統文化・技術の記録に精力的に取り組んでいる。
”03年、これまでの作家活動を讃え、国際天文連合より小惑星11987にYONEMATSUの名が授与された。
著書は『手業に学べ」『聞き書きにっぽんの漁師』など。

塩野米松(著/文)
発行:新潮社
文庫判 582ページ

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